ともにここから。兆しは見せている

川崎Ｆは16位、浦和は10位と、順位だけを見れば“沈む”という表現が正しいのかもしれないが、首位との勝点差は前者が『10』、後者が『５』。まだ10試合を終えたばかりで、悲観するほどの差ではない。お互いに目標とする優勝に向け、この試合での勝点３を上位進出への足がかりとしたい。

ホームの川崎Ｆは前節、アウェイで広島と対戦し、２－２で引き分けた。一度は逆転しながらも、その１分後に失点を喫して勝ち切れなかったことは、５試合勝利から遠ざかることになった意味でもネガティブな面だった。

ただ、同時にポジティブな面が多く見られたことも確かだった。それは、川崎Ｆらしいビルドアップからのボールポゼッションで広島の強度の高いプレスを回避しながら前進し、チャンスを作ったこと。前線のプレスから連動して強度の高い守備を見せたこと。

途中出場の小林 悠が三浦 知良の記録を抜くＪ１歴代単独７位となる通算140ゴール目を決め、クラブワーストタイに延びていた連続無得点試合を『４』で止めたこと。その小林は負傷交代してしまったが、代わって入った若手ストライカー・山田 新がゴールを決めたこと。２失点こそしたものの、GKチョン ソンリョンのウォームアップ中の負傷によって急きょ出番が回ってきた上福元 直人がビッグセーブ連発の活躍を見せてチームに勝点をもたらしたこと。

そういったことが見られただけに、結果は残念だったが、優勝を目指すチームとして上位陣と互角の試合を展開し、「自信を持ってピッチに立てばボールを動かせるし、ゴールに迫れる」（鬼木 達監督）ことをあらためて証明したことは、今後に向けてさらに自信を深めていい要素となった。

その流れを継続し、さらに発展させながら、ホームで６試合ぶりの勝利をなんとしても手にしたい。試合に向けた準備を含め、やるべきことは「変わらない」（鬼木監督）。後方から攻撃を組み立て、パスをつないで前進しながら、ゴール前にどれだけ人数をかけられるか。そして何より大事なゴール。「去年よりもスキはある」と山田が分析する浦和の守備を崩し、勝利につながるゴールを奪いたい。

一方、アウェイに乗り込む浦和は前節、ホームで名古屋と対戦。それまでの６試合で５勝１分だった相手を２－１で下し、連敗を『２』で止めた。苦しい時間帯もありながら、今季初スタメンとなった安居 海渡が先制ゴールをマーク。前田 直輝が積極的な仕掛けで得たPKをチアゴ サンタナが決めたほか、サミュエル グスタフソンが高い技術で相手の守備をいなしながらゴール前にも顔を出し、中島 翔哉はハードワークしながら抜群のキープ力でチームに貢献した。

10試合を終えて浦和は４勝２分４敗とキレイに五分の成績だが、10位と前評判の高さほどの順位につけられていないのは、連勝がないことが大きな要因の１つになっている。四度目の挑戦で今季初の連勝を果たし、勝利の数を敗戦数よりも多くできるか。

両者ともに前節、浮上の兆しを見せることができたのは、ピッチ上のプレーや戦術だけではなく、勝利への飢え、気持ちを前面に出したことも大きな要因の１つだった。Ｕｖａｎｃｅとどろきスタジアム ｂｙ Ｆｕｊｉｔｓｕで勝利への意欲をより見せることができるのはどちらか。シーズンが序盤から中盤に差しかかろうとする中、両者にとって非常に重要な一戦となる。